会報『ブラジル特報』 2012年11月号掲載
日系企業シリーズ第21回

                      竹田 誠治 (Omron Healthcare Brasil Ltda. 社長)


 オムロンヘルスケア株式会社は、2003年7月にオムロン株式会社から分社して設立された健康医療機器やサービスの開発・販売を行う会社です。オムロン株式会社の主力事業は、ファクトリーオートメーションやセンサーなどの産業機器であり、健康医療機器事業とは顧客やビジネスモデルが異なることからオムロンヘルスケアは、より顧客に密着し専門性と機動性を高めるために分社しました。
 「地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献」をミッションに、今日では世界中で事業を展開しており、主力商品である家庭用血圧計は、グローバルシェアが約60%を維持しています。しかしながら残念なことに、ブラジルでの本格事業拡大は始まったばかりで、まだまだブラジルの人々の生活に貢献できていないということです。

 初期は売上げ伸びず
 私たちのブラジルでの事業展開は、1997年にスタートしました。シカゴから商品を輸出し代理店を通じての販売です。しかし事業拡大のスピードがなかなか上がらない状況が続きました。 2002年に代理店を変更、多少売上は拡大したものの再度、売上が伸びない状況が続きました。BRICsの一角としてブラジルが再び脚光を浴びだした08年4月に、中国・上海で市場開拓を行っていた私がシカゴから移動になり、シカゴからブラジルを中心に中南米市場を開拓するよう会社から命じられました。11年からはブラジルに転勤し、現場での事業マネジメントを遂行しています。
 初めてのサンパウロ出張は上海から転勤になった直後の2008年。とにかく市場を自分の目で見て確かめようと薬局を何件もまわりました。驚いたことは、ほとんどどこにも当社の製品が並んでいないこと。一方で、競合の商品が多く棚に並んでいました。市場の大きさを感じとり、すぐに市場規模の調査を実施しました。ここでも想定していた以上のはるかに大きい市場に驚きました。「代理店まかせでは事業は大きくならない」との判断のもと、サンパウロに会社を設立したのが09年。家庭用血圧計企業としては、最後発の企業としてのスタートです。会社を設立したものの、医療機器の各種ライセンス取得、輸入権の取得、代理店との契約解消など、大変長い時間がかかります。事業が計画どおりスタートできないため、本社への説明と度重なる増資と大変なタフな時期が続きました。すべての条件が整ったのは12年に入ってからです。長い準備期間が終わり、本年度から本格的な事業拡大のステージに入ることができました。現在では社員数20名にまで拡大しております。

展示会場におけるオムロンヘルスケア社ブース


 障壁多いブラジルビジネス
 「ブラジルコスト」「何事にも時間のかかる国」などブラジルビジネスの難かしについて多くの書籍で触れられていますが、まったくそのとおりで、現在でも多くの課題に頭を悩ましています。それでも社員と知恵を絞り、課題を乗り越え、私たちの商品をブラジルのお客さまに届けることができた喜びは何事にも変えがたいものがあります。

 健康づくりにチャレンジ
 ブラジルの高血圧患者数は世界でも指折りであり、残念なことにそれが原因で心疾患、脳疾患になられて亡くなられる方が大勢いらっしゃるというのが現状です。家庭での正しい血圧管理方法を啓発し、一人でも多くの方に当社の商品をお使いいただき、血圧管理を行っていただくことが私たちの使命です。
 また、今後は喘息患者さま向けへのネブライザ、肥満を解消するための支援ツールなど品揃えの幅を広げ、よりブラジルの方々の健康づくりに貢献すべく、チャレンジを続けていきます。