会報『ブラジル特報』 2012年5月号掲載
日系企業シリーズ第18回

                                     高木 和博 (ヤマトグループ代表取締役社長)



 私どものヤマトグループは、ブラジルで主に日本食、雑貨の輸入卸をしている商社であるヤマト商事を中心に、お弁当、お寿司のデリバリーの「ビストロカズ」、日本の味噌ラーメン専門チェーンの味噌屋のフランチャイズである「らーめん和」、日本食総合施設の「エスパッソ・カズ」で成り立っているグループですが、いわゆる「コロニア企業」です。

輸入自由化で取扱い商品増加


 ヤマト商事は、1991年に3人の仲間で創業しました。日本食品を主に扱うようになったのは、たまたま舞い込んだインスタントラーメンの販売を手がけたことがきっかけでしたが、コロルプランの輸入の自由化の波に乗り、扱う商品の種類、量を増やしていきました。とくに日系コロニアの方々の経済力が大きく伸びて、いわゆる日本の日本食に対する需要が高まった時代です。同時にブラジル人社会にも日本食が浸透し始めて、日本食レストランが雨後の筍のように生まれてきたという時代の流れも後押しをしてくれました。

 新商品開拓の中でも印象に残っているのは、今でも主要扱い品になっている冷凍食品と日本製陶器です。陶器は売り先を工夫しました。いわゆるギフトショップではなく、日本食のメルセアリア(食料品店)に持ち込んだのです。
 日本食を買いに来られるお客様は和食器にも興味をもたれるだろうという読みでしたが、実際、飛ぶように売れました。日本製のシャンプー同じようにメルセアリアにおいてもらいましたが、これも駐在員の人を中心によく買っていただけました。先述しましたように1990年代はブラジルで日本食が健康ブームに乗って、日系人以外の一般のブラジル人マーケットに一気に広がった時期です。まさにその時代の真っ只中にいた弊社は、その間に現在の社屋を購入し、セントラルキッチンも作って、お弁当とお寿司製造の分野にも参入しました(ビストロカズ)。日本から寿司ロボットを輸入しての製造です。自社だけでなく、ブラジルで寿司ロボットを普及できないかとも考え、1997年にアニェンビ総合展示場で開かれるレストラン、ホテル向けの展示会である「エキポテル」に出展、デモンストレーションもしました。

ビストロカズでお弁当製造・デリバリーに参入した後、次に計画したのは外食産業への参入でした。日本食レストランの業界も何か特徴を出さなければ商売にならない時代に入っています。そこでラーメンという商材を武器に、未知の分野であった外食産業に入ることにしたのです(らーめん和)。ブラジルで入手できる小麦粉では麺作りが難しく、なかなかブラジルでは美味しいものを食べることができません。それなら本業の商社機能を利用して日本から麺もタレも輸入して、本格的なものをやろうという挑戦です。日本に良いパートナー(味噌屋チェーンを運営するトライ社)を得て、お陰様を持ちまして、常に行列ができるお店に成長しました。

写真:高木和博社長


外食産業に参入
 それ以降、外食の分野に本格的に参入する意思を固め、昨年の 10月に「エスパッソ・カズ」をオープンしました。居酒屋風レストランや、お弁当やケーキなどを売る和風デリカテッセン、日本のゴーゴーカレー、そして日本酒・焼酎の専門酒屋とバーが入っています。まさに温めていた企画を一気に実現させたという感じです。 このように弊社の過去を振り返りますと、商いとしてではありますが、商品あるいは料理を通じて日本の文化というものを自分たちなりにブラジルに浸透させていったということができたのではないかと思っています。 3人でスタートした会社ですが、現在グループ全体で約 130人の従業員が骨身を惜しまず働いてくれる規模になりました。 その中にはかつての私のようにブラジルに夢をもって渡ってきた若い一世の青年もいます。そういう人たちに夢を託せる場を作っていくことが、やはりこれからの私たちの企業使命ではないかと考えています。