会報『ブラジル特報』 2012年1月号掲載

                                         日本ブラジル中央協会会長 清水 愼次郎



明けましておめでとうございます。
 欧州債務問題は、実体経済にも影響を及ぼしつつあり、世界経済減速への懸念が強まっています。ブラジルでは、昨年後半以降、株式下落やレアル高の修正の動向が見られ、通年のGDPは年初予測から下方修正される見通しです。ブラジル中銀は景気下支えのため、3度金利引き下げを実施、金融緩和に軸足を移していますが、同国経済のファンダメンタルズは、尚、良好に推移しており、比較的安定した財政基盤を背景に、本年も昨年に近い堅実な成長を維持するものと予想されます。
 昨年、同国のGDPは世界6位に達したと推定され、資源・農業生産力・工業力を背景に地球規模の将来に対するその担保力は大きく先進国と新興国の橋渡しを担える国として、また魅力ある投資先として、世界経済を牽引する役割をさらに果たして行くことを期待しています。

 8月サルバドールで開催された日本ブラジル経済合同委員会では、資源・インフラ・農林業・環境等幅広い分野での協力体制の再構築が合意され、科学技術協力・人材の交流育成強化がテーマとなりましたが、補完的2国間関係から、今後、ますます戦略的パートナーとして、長期的観点からも、各分野での具体的進捗が望まれます。

 また、今後の両国協力は二国間(バイ)関係から発展し、ラテンアメリカ、アフリカやアジア等第三国市場での多角的(マルチ)な協力関係への拡大が望まれ、既に農林、エネルギー、放送通信分野等で実現しつつあることは歓迎すべき方向と思います。こうした多角的関係の構築は、同時に両国間協力を一層強化し、さらにはここに日系人の活躍の場が広がるものと考えます。

 ブラジルでは、本年6月グリーン・エコノミー(気候変動)をテーマにリオ+20が世界約百数十ケ国の参加を得て開催が予定されており、先進国・新興国・開発途上国を広く取りまとめ会議成功に導くためのブラジルの役割が注目されます。こうした国際的行事のインフラ・運営・治安対策等は、2014年サッカー・ワールドカップ、2016年リオデジャネイロ・オリンピック開催へ貴重な経験となり、国を活気付けることでしょう。日本も大いに協力をして行きたいところです。

  当協会は今年創立80周年を迎えます。設立時の理念「両国間の経済と文化の交流促進」は今も変わりません。今後とも皆様のご支援・ご鞭撻をお願い申し上げます