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| 会報『ブラジル特報』 2011年7月号掲載 アマゾンアルミ・プロジェクトの新たな展開 ― Norsk Hydro社をパートナーに迎えて― 岸本 憲明(日本アマゾンアルミニウム株式会社 常務取締役) 本年2月28日、アマゾンアルミ・プロジェクトの発足以来30余年にわたってパートナーであった VALEが、ノルウェーのアルミ専業メーカーであるNORSK
HYDROにその保有するアルミ関連資産のほとんどを譲渡し、事業の経営から撤退、プロジェクトはHYDROとのパートナーシップのもとで新たなスタートを切ることとなった。かかる歴史的な転機にあたって本稿では以下、その概要、経緯、展望、課題等を整理してみたい。
VALEによる事業資産譲渡の概要 2010年5月、VALEとNORSK HYDROは、アルミ関連の資産・権益の譲渡に関する基本合意に達したことを発表した。その後、所用の評価作業等を経て2011年2月28日に譲渡手続きが完了し、名実ともにHYDROがプロジェクトのパートナーとなった。 VALEはHYDROに対して、アルブラスの持株(51%)のすべて、アルノルテの持株(57%)のすべて、建設途上の第二アルミナ工場(CAP)の持株(61%)のすべて、さらにボーキサイト採掘会社(パラゴミナス)の持株100%のうち60%を譲渡する。報道によれば、VALEはその見合いとして、債務肩代わり7億ドルを含めて、またHYDROの株式による支払も含めて49億ドルをHYDROから受け取る。この結果、HYDROはアルノルテについてはすでに保有していた34%と合わせて91%を保有することとなり、パラゴミナスの残る40%についても2013年、15年に20%ずつ買い取るオプションを有する。 HYDROは最も弱い分野であるボーキサイトについては、当面経験豊富なVALEとのJ/V方式をとる一方、アルミナおよびアルミ地金に関してはVALEの持株全量を買い取り、その経営に当たることを選択した。一方、VALEはHYDRO株式22%を取得し、間接的に本事業に関わっていくこととなった。 HYDROはアルブラス、アルノルテおよびCAPにおける既存パートナーとはその関係を維持する方針を表明、なかでも日本アマゾンアルミニウム( N A A C ) との関係は重要と位置付けている。 NAACは関係先と協議のうえ、当社の権利が損なわれないこと、VALEの義務がすべてHYDROに承継されることを前提に本件に同意した。
統合に至った背景事情 一言でいえば、VALEとHYDROの利害・思惑が合致したということに他ならない。
展望と課題 地金を軸にグローバルにアルミ事業を展開している専業メーカーたるHYDROがパートナーとなったことは、今後のプロジェクト展開において少なくともVALEの時代よりも柔軟性の余地ができことを意味するといえるであろう。また、アルミ事業を非中核事業と位置付けるVALEよりも、専業メーカーのHYDROのほうが従業員のモラールにも好影響を与えるであろうと期待される。HYDROも真剣にアルブラス、アルノルテの従業員との融和を図っており、従業員側も今回の統合を好感している。 HYDROはアルミ専業メーカーだけあって、幹部に至るまでアルミの技術的詳細に精通したプロ集団であるが、VALEとは事業経営、ガバナンスに対する考え方が異なることから、現在NAAC加わってプロジェクト運営の組織的・制度的ストラクチャーを検討している最中である。永続的な機関やルールなどの全容が固まるまでには今しばらくの時間を要するものと思われる。ただし、日本側がプロジェクト発足時から技術と人材を提供して育成してきたアルブラス、アルノルテの従業員は基本的にそのまま残るため、日々の操業・管理上の問題はない。 ブラジルは2010年、7.5%の経済成長を達成、本年も4%強の成長が見込まれている。中間層を中心とした個人消費の伸び、さらに14年のサッカーワ—ルドカップ、16年のリオデジャネイロ五輪等を背景としてブラジル国内のアルミ需要は着実に伸びており、ブラジル・アルミ協会(ABAL)の調査によれば、今後10年で国内消費は倍増し、21年には200万トンに達する見通しである。一方、国内の地金生産は現在160万トンであるが輸出を除いた国内供給は国内消費を下回っており、不足分は輸入でカバーされている。国内の製錬能力拡張を大きく制約している電力料金問題が解決されない限り、ブラジルはボーキサイト、アルミナという原料を国内に豊富に持ちながら地金の輸入依存が強くなっていく構図は避けられない。 アマゾン・アルミ事業は数多の苦難を克服してVALEとの間に信頼・協力関係を築いてきた先人の努力によってここまで成長してきた。本事業は日本が権益を持つ数少ないアルミ事業であり、その長期安定的な対日供給のため、HYDROとの間に堅固な協調体制を構築し、事業の一層の充実を図ることがいま我々に課せられた課題であり、今回の統合を成功させるべく、NAACとしても全力を傾ける所存である。 |