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| 会報『ブラジル特報』 2009年3月号掲載 島内 憲 駐ブラジル大使講演「国際金融危機とブラジル」要旨 日本ブラジル中央協会・ラテン・アメリカ協会共催 講演会(2009年1月27日) はじめにリーマン・ブラザーズ破綻前のブラジル経済の状況について説明致します。数字で見ますと2008年5月にサンパウロ株式市場(BOVESPA)の株価指数は73,000ポイントと創設以来の高値を記録、外貨準備も2,000億ドルを突破しています。これは資源、食料の輸出の増に加え、ブラジルへの投資の流入が大であったことを示しており、投資適格国への格付け引き上げが国際証券市場でなされました。ルーラ大統領もこの動きを背景に「米国発の津波の影響はさざなみ程度」と当時自信のほどを示していました。しかし間もなくこのショックが米国に留まらず世界の金融・経済にショックを与えるに到り、ブラジル経済にも急ブレーキがかかることとなりました。 ヘッジファンドをはじめとする外国投資資金の大量引き上げ、信用収縮による内需の急激な落ち込み(自動車、家電製品)、国際商品価格(鉄鉱石、大豆等)の暴落といった影響が出て、国際収支も急速に悪化しました。株価は2008年の1年間で41.22%下落、為替は08年8月の1.55レアル/1米ドルから年末には2.33レアルへと大幅レアル安となりました。 要すれば外国人投資家の手元流動性確保による投資引き上げ、さらには「資源国ブラジル」というパーセプションによるブラジル売りが、サブプライムと直接関係のないブラジルにも大きな影響を与えたわけです。もっとも近年のブラジルの国際評価の急上昇、大量の資金流入、レアル高といったややバブル的な状況もショックの影響を大きくしたともいえましょう。 この情勢に対し、ブラジル政府は迅速に金融政策(金融はじめ諸産業への資金注入・為替介入・中銀政策金利の引き下げ等)、財政政策(金融取引税・自動車販売の工業製品税の引き下げ等)発動などにより内需の拡大を図るとともに、これを機に複雑高率な税制、公務員年金制度、硬直的労働・雇用制度といった諸分野の構造改革の必要性があらためて討議されています。 このような現状にありますが、私はブラジルの中期的な見通しは明るいと思っています。先進国はもとより新興国、BRICs他の諸国より経済全般の傷は浅く、国力の比較優位がより鮮明になってきていると思うからです。金融面においては直接のダメージはなく、資源および産業についても、今や限られた分野に依存したモノカルチャー経済ではありません。国内的には個人消費嗜好はまだまだ旺盛であり、民主主義の定着した相対的に透明性、安全度の高い社会は今後ともグローバル・マネージメントといったニューフェーズの国際社会の中での良識派として、世界で責任ある役割を果たすことが出来る国として期待しています。 わが国との関係においては、国連安全保障理事会の改革、常任理事国入りへの共同歩調、鉄鋼、自動車、エタノール、海底油田開発といった分野の企業投資、デジタルテレビ、リオデジャネイロ〜サンパウロ間高速鉄道といった経済協力プロジェクトが進められています。日本もブラジルから資源輸入のみならず航空機も輸入する時代となっており、質的変化をともなう関係拡大が期待されている次第です。
今回の金融・経済危機においてブラジルは、国内政治の安定性、平和な国際環境、豊富な資源という特性より、相対的に他国に比し悪影響が少ない国です。日本の視点から見れば日系社会の存在により形成された親近感、戦後のナショナル・プロジェクトが培った信頼関係を有するブラジルは、日本のDNAを持つ数少ない国であります。このより良き関係を生かして、日本とブラジル両国関係のさらなる発展のため、引き続き微力を尽くしたいと念じております。ご拝聴有難うございました。 (文責 当協会常務理事 橋本文男) |